学園キメラ~俺とお前とときどきキメラ~ 第六十八話 「キメラ大神楽2」
- 2023.11.30 Thursday
- 16:47
学園キメラの第68話です。
※この物語は人間神谷飛鳥(みたにあすか)と、
たくさんのキメラたちの平凡な日常を描いた物語です。
飛鳥(その日、俺は見てしまった。マリアさんの…生まれたままの姿を。)
マリア「あ…あ…はぅぅぅぅぅ…。」
シハク(彼女はずぶぬれだった。金魚すくいの水槽に誤って落ちてしまったのだ。その時、彼女が着ていた浴衣が、水の重さではだけ、中身が丸見えになってしまっていたのだ。)
マリア「み、見ないでくださいまし!」
キョウカ(それを見たのは二人だけではなく、僕ら周囲にいたキメラ全員もだった。すぐさま一緒にいた葵夜酉さんたちが彼女の壁になってくれた。)
飛鳥「お前ら、どうして後ろを向く!?」
飛鳥(俺がぼーっとしている間に男全員は後ろを向いた。やばい、俺だけ取り残されてしまった…。)
マリア「ぐ…ちょっと、失礼します!」
飛鳥「鏑木さん!?」
シハク「マリアさん!?」
飛鳥(水槽から出て、壁の陰で浴衣を絞って水けをきり、着付けを直したマリアさんは、そのままどこかへ行ってしまった。)
シハク「待ってください!!これは違うんです!!」
飛鳥(会長がそれを追いかける。だが俺は、しばし放心したままだった。)
飛鳥「俺だって落ちて、びしょぬれなのに…。」
第六十八話 「キメラ大神楽2」
オディール(今から1か月前。その日、わが息子・臥梁マナツはいつも通りにシマのパトロールを、チームマナツのメンツで行っていた。
シマのパトロールといっても、暴走キメラの発見とそれを抑え込むことが仕事なので、それがなければ大概暇だった。
その日も何事もなく、パトロールは進行していた。…ように思えた。)
マナツ(スレイプニルとバハムートのキメラ)「ちょっと休憩するか。」
赤月ミカド(狼とカマキリのキメラ)「1時間くらい歩いたからね。そりゃ疲れるさ。」
日野リョウ(イルカとプラナリアのキメラ)「俺はまだまだ大丈夫っすけどね。さっさと休んで、次に行きましょう!」
八雲ツバサ(金鶏とゴミムシダマシのキメラ)「お前は元気がありすぎ。」
マナツ「ははは…それにしても、なんか平和だな。何もない日がかれこれ2か月以上は続いている。4月ごろはたくさん暴走騒ぎがあったのに、今ではさっぱりだ。」
ミカド「新年度は新社会人が、羽目を外したがることがあるみたいだから、発生しやすいんだろうね。俺たちだけじゃなく、サツも動いていたしね。」
ツバサ「確かに騒がしかった。」
マナツ「みんなまともになったってことか。」
リョウ「なんかつまんねえ。暇すぎる。なんかおっきいこと、パーっと起きませんかねぇ?って顔、してるぞ。お前。」
ミカド「マナツ様にお前呼ばわりはやめろって言ってるだろ!」
リョウ「げ、やべ。」
マナツ「確かにそうかもしれない。自分では平和でいいと思っているが、それにしては自分たちの仕事がないから、何かが足りないと思っている。例えるなら、火事がない日の消防士のようだ。」
ツバサ「…変なことはするな。おのずから抗争を起こしたりとか。」
マナツ「ツバサ…わかってる。もうあんな抗争はこりごりだからな。でも俺にとっては物足りないんだ。この気持ち、わかるか?」
ツバサ「確かにわからんでもないが、ルールというものをわきまえてくれ。」
ミカド「俺たちはチームだ。今、リーダーが何かを起こせば、チーム全体の責任になる。だから、お前からトラブルを持ち込まないでほしい。」
リョウ「それは俺だってやだよ。」
マナツ「わかっ…。」
オディール(その時だ。)
ガタガタっ!
オディール(突如、近くにあった下水道のマンホールのふたがガタガタとなり始め、大量の水が噴き出してきたのだ!)
マナツ「な、なんだぁ!?」
ミカド「これは…海水だ!!おかしい、海水がここまで逆流してくるなんてありえない!」
オディール(4人が驚いている間に、その海水から黒い大きな影が飛び出してきた。)
リョウ「なんだ?サメか?」
ツバサ「いや、違う!人の形をしている!…キメラ…か?」
オディール(その人の形を成した影は、いきなりマナツに向かってこう言った。)
???「えっと、そこにいるあなたでいいや。僕と結婚してください!」
マナツ「は?」
???「僕、結婚しないと、国が滅んでしまうんです。だから、結婚してください!僕の名は…」
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オトワ「カルメ焼きください。2つ。」
トロ「おごってくれるのか?」
オトワ「当たり前だ。…だからな。」
トロ(キメラ大神楽当日。俺は結局イズミさんは誘わず、一緒に行こうとオトワに誘われたので、やつについていった。
因みにオトワは、小声で恋人だといっていた。)
カルメ焼き屋台の店主「はいよ、カルメ焼き2つ。」
オトワ「ありがとうございました。はい、おまえの分。」
トロ「サンキュー。」
トロ(俺たちは鳥居の近くまで、歩いて行った。まだ神楽が始まらないので、みんなの待ち合わせ場所に戻っていったのだ。)
オトワ「ところで本当に誘わなくてよかったのか?ミキヒサ先輩の妹のことを。」
トロ「うん。これが俺の、幸せだからな。いや、俺とお前にとって…かな?」
オトワ「あ、神谷。それに兎影。」
トロ「話聞けよぉ!」
トロ(俺の話はまじめだったのに、相変わらずこいつは…。でも、一つになる前と後で、印象が違う。なんというか、特別な感じだ。)
飛鳥「よ。」
キョウカ「こんばんは。」
エフラム「我々も来てやったぞ。」
ミラー「ういっす!」
トロ「お前らも来たのか。衛宮に旅下。」
飛鳥「見たところ、取込み中みたいだったが、俺らお邪魔だったか?」
トロ(完璧お邪魔だよ!もっと遅く登場してほしかったよ!)
オトワ「そんなことないぞ。ちょうど時間だしな。だろ?」
トロ「え?ああ…。」
トロ(なんでお前も同意する!?)
マリア「皆様、お揃いですわね。」
飛鳥「鏑木さん。」
オトワ「うわぁ!!!!!!女ぁ!!」
トロ(オトワはびっくりして俺の陰に隠れた。)
ツキヒ「お久しぶり!」
ミオ「増えてるわね。殿方が。」
ミアキ「おっす、キョウカ君。」
ヒヨリ「そんなに怖がらなくていいのに。」
キョウカ「お久しぶりです。みなさん、浴衣がよくお似合いで。」
ミアキ「ありがとう。早速ゲームのお店行ってみようと思ったんだけど、マリアちゃんに誘われて飛鳥君に挨拶をしに行くことになって。」
マリア「社交辞令ですわ。いずれ合流して遊ぶ予定でしたし。」
ミゥ「…随分と場違いなところに来てしまいました。」
エフラム「あ、こやつはバスケ部の…。」
ミラー「マネージャーじゃん。」
飛鳥「いろんな奴と知り合いなんだな。鏑木さんって。」
マリア「知り合ったのは皆さん、つい最近ですわ。これも飛鳥さんたちのおかげです。ありがとうございました。」
キョウカ「いや、そんなに大それたことはやってないよ。ねえ?」
トロ「お、おう。こいつは逃げてばっかだし。」
オトワ「早くどっか行ってくれ。」
トロ(すると、また誰かが来た。5人だ。)
???「合流地点はこちらですね。…あ。」
マリア「あらごきげんよう、シハク様。」
トラジ「若!!」
フウチ「横にいるのは…。」
チュウイ「例の人間であります。」
ヒャクエ「どういうことですか?」
シハク「説明してください、私はあなたに誘われて、この神社に赴いたのです。警戒して他の生徒会役員も誘いました。何の真似なんですか?マリアさん。」
マリア「これはデートに見せかけた…」
トロ(これはバトルか?神谷をかけたバトルロイヤルが開催されるのか?と思ったら…。)
マリア「罰ゲームですわ。」
シハク「は?罰ゲーム?どういう意味ですか?」
マリア「あなた、私に負けましたよね?2回も。だから、このデートは私から誘おうと思ったわけですわ。」
シハク「…確かに。しかしながら、私にも断るという権限はあると思いますよ。同等の立場というならば。」
マリア「断るのですか。私がせっかく誘ったというのに…。」
シハク「誰が断るといいましたか?受けてやると言ったんです。あなたが悲しむというのならば、受けてやるしか方法がありませんから。」
トロ(その時俺は見逃さなかった。会長が小声でくそっ!と吐き捨てるのを。)
シハク「それで、罰ゲームの内容とは何なのですか?」
マリア「それでは試しに、飛鳥さんと一緒に過ごしてみたらいかがですか?一応これが罰ゲームです。大丈夫です。私もいますから。」
飛鳥「え?」
キョウカ「このお祭りで、会長と一緒に過ごす!?」
シハク「お祭りを神谷君と一緒にめぐるだなんて、無茶ブリにもほどがありますよ。ふざけないでください!!」
マリア「嫌なのですか…?」
ヒヨリ「マリアさん、泣いてしまいました。」
トラジ「鼓舞象、彼女を泣かせては、会長のメンツに傷がつきやす。」
フウチ「女性には優しくしないといかんけぇの!」
シハク「うう…わかりました。1時間…いや2時間、神谷君と一緒にいます。このくらい、耐えて見せますよ。」
マリア「ありがとうございます!それでは今から2時間、花火の時間が終わるまで、飛鳥さんと一緒に縁日を回ってください!スタートです!」
トロ(そういうと、鏑木さんたちは神谷と会長の周りから離れていき、俺たちと生徒会だけになった。会長はおもむろに神谷の隣に立つと、ものすごい形相で神谷をにらんでいた。)
飛鳥「気まずい…ものすごく気まずい…。」
→続く